金利が下がると株よりも値上がりする――そんな“爆上がり銘柄”があるのを知っていますか?
それが、米国の超長期債券ETF「EDV」と「TLT」です。
私も「株が下がるときの逃げ場が欲しい」と思い、両者を調べ始めましたが、
この2つ、同じ“長期国債ETF”でも中身はまったくの別物なんですよね。
金利低下局面で大きなリターンが狙える一方、金利上昇局面では容赦なく値下がりする。
この記事では、分配金の違いやリスク感応度(デュレーション)に注目しながら、
EDVとTLTの本質的な違いを“初心者にもわかりやすく”比較します。
金利サイクルを味方につけて、どちらをポートフォリオに組み入れるべきか、
一緒に整理していきましょう。
📘 知っておきたい言葉:「デュレーション」とは?
債券や債券ETFの話でよく出てくる言葉に「デュレーション(Duration)」があります。
最初は「なんか難しそう…」と思うかもしれませんが、
かんたんに言えば「金利にどれだけ敏感に反応するかを表す指標」です。
💡 デュレーション=お金が戻ってくるまでの平均期間
債券を持っていると、利息(クーポン)と元本を受け取れますよね。
デュレーションとは、そのキャッシュフローが戻ってくるまでの“平均期間”を
「時間の重み」をつけて計算したものです。
クーポン(利息)が高かったり、満期までの期間が短かったりすると、
お金が早く返ってくるのでデュレーションは短くなります。
逆に、利息が少なく満期が遠い債券ほどデュレーションは長くなる傾向があります。
📈 デュレーション=金利変動に対する価格の感度
デュレーションは「回収までの期間」だけでなく、
金利が変わったときに価格がどのくらい動くかを示す目安にもなります。
- デュレーションが長い債券ほど、金利に敏感に反応する
- 金利が1%下がれば、価格は「デュレーション%」上昇
- 金利が1%上がれば、価格は「デュレーション%」下落
つまり、デュレーションが長いほどハイリスク・ハイリターンなんです。
たとえば代表的な総合債券ETF BND(デュレーション約6年)と比べると、
EDV(約24年)は金利への感度が桁違いだとわかります。
🏦 米国の超長期債ETF【EDV vs TLT】徹底比較!最大の違いはデュレーション
金利が1%動くだけで価格が大きく揺れる「超長期国債ETF」。
ここでは、代表的な2つ──EDVとTLT──の違いをわかりやすく整理します。
🔹 主要ETF比較サマリー
まずは、基本データと特徴をざっくり比較。
運用会社・ベンチマーク・デュレーションなど、違いを一覧で確認します。

| 項目 | 【EDV】 | 【TLT】 |
|---|---|---|
| 投資対象 | ストリップス債(ゼロクーポン債) | 通常の利付国債 |
| 実効デュレーション | 約24年台(指数の平均満期24.5年に相当) | 15.73年(2025/10/03時点) |
| 経費率 | 0.05% | 0.15% |
| 純資産総額 | 約45億ドル(参考) | 約482億ドル(2025/10/06) |
| 配当利回り(30日SEC) | 5.02%(2025/10/02) | 4.67%(2025/10/03) |
| 分配頻度 | 四半期 | 毎月 |
ゼロクーポン債と利付国債の違いをわかりやすく解説
まず、EDVとTLTの最大の違いは「どんな国債を組み入れているか」です。
ここを理解すると、なぜEDVの方が激しく値動きするのかが見えてきます。
🧾 ゼロクーポン債(ストリップス債)=EDVが投資している債券
- 利息(クーポン)がない国債です。
- 通常の国債から「元本部分」と「利息部分」を分離(=ストリップ)して、元本部分だけを売買します。
- 利息がない代わりに、額面より安く買って、満期で額面(100)を受け取ることで利益を得ます。
たとえば、額面100ドルの債券を70ドルで買った場合、
満期で100ドルになる=30ドルが利息のようなものです。
💬つまり、EDVは「利息なし・元本の値動きだけで勝負する債券ETF」。
金利が下がると、将来の割引率が小さくなり、価格が一気に跳ね上がるのが特徴です。
💰 利付国債(クーポン付き国債)=TLTが投資している債券
- 一般的な国債で、半年ごとに利息(クーポン)をもらえます。
- 満期まで保有すれば、元本+利息で安定したリターンが得られます。
- EDVよりも値動きは穏やかで、分配金を受け取りながら長期保有できるタイプです。
💬つまり、TLTは「金利変動の影響を受けるけど、利息があるぶん安定感があるETF」。
📊 金利1%の変動でどのくらい動くの?
債券価格は、金利(利回り)と反対方向に動きます。
金利が下がると価格は上がり、金利が上がると価格は下がります。
| ETF | 実効デュレーション | 金利1%変動時の目安 |
|---|---|---|
| EDV | 約24年 | 約24%価格変動(上昇or下落) |
| TLT | 約15.7年 | 約15〜16%価格変動(上昇or下落) |
💬たとえば金利が1%下がると、EDVは+24%前後、TLTは+16%前後上がる可能性があります。
逆に金利が1%上がると、同じだけ下がるということ。
違いを一言で言うと
| 観点 | EDV | TLT |
|---|---|---|
| 債券の種類 | ゼロクーポン債(利息なし) | 利付国債(半年ごとに利息あり) |
| 値動きの激しさ | とても大きい(レバレッジ感強い) | 比較的安定 |
| 金利1%変動時 | 約±24% | 約±15〜16% |
| 分配金 | ほぼなし | 毎月あり |
| 向いている人 | 金利低下局面で値上がりを狙いたい人 | 安定運用+分配金を得たい人 |
🔹 各ETFの特徴と中身をチェック
2つのETFの「性格」を知ることで、自分のポートフォリオに合うかどうか見えてきます。
【EDV】バンガード・超長期米国債ETF
ゼロクーポン債(利払いなし)に特化。金利低下時の爆発力が魅力ですが、逆に上昇局面では値下がりリスク大。
“金利トレードの切り札”のような存在です。
【TLT】iシェアーズ 米国債20年超 ETF
分配金を受け取りながら安定運用できる、王道の長期国債ETF。
金利変動に敏感ながらも、EDVよりは穏やかな値動きが特徴です。
🔹 投資のポイントと注意点
長期債ETFは、うまく使えば「株式のヘッジ」にもなります。
ただし、リスクを理解せずに持つと大きく値動きに振り回されることも。
1.デュレーション=価格変動の大きさを理解する
EDVのデュレーションは約25〜27年、TLTは約17年。
この差が、金利1%変動時のリターン差を生む最大の理由です。
2.ポートフォリオにおける「ヘッジ」機能
株式が下落する局面で債券が上がることが多く、リスク分散効果が期待できます。
特にEDVは景気後退局面の“保険”的な役割にも。
3.結局どちらを選ぶべきか?
・短期リバウンド狙い→EDV
・安定運用+分配金狙い→TLT
この2つを理解して、金利サイクルに合わせた使い分けを意識しましょう。
出典(一次情報)
- Vanguard「EDV | Extended Duration Treasury ETF」:連動指数・投資手法など(公式ページ)
- iShares「TLT | 20+ Year Treasury Bond ETF」:投資対象(利付米国債)の基本情報(公式ページ)
- Vanguard『EDV サマリー/プロスペクタス』:指数の平均満期24.5年の記載(2024/08/31基準)(PDF)
- BlackRock「TLT 公式ページ」:実効デュレーション15.73年(2025/10/28)、30日SEC利回り4.59%、月次分配、純資産など(公式ページ)
- Vanguard「EDV 経費率0.05%」(2025/02/03時点)(公式ページ)
- EDV 純資産規模(参考):約45億ドル(Yahoo Finance)
- EDV 30日SEC利回り4.83%(2025/10/30)(公式ページ)
- EDV 分配頻度:四半期(Vanguard 配当スケジュール資料/EDV個別ページ)(配当スケジュールPDF / EDV地域サイト)
📈 株価:過去~現在
リーマンショック、コロナショック、そして近年のインフレ局面。
長期金利が大きく動いたこの15年で、EDVとTLTはどんな値動きをしてきたのかを振り返ります。

🕰 ① リーマンショック(2008〜2009年)
- 金利:急低下(安全資産への逃避)
- 結果:EDVもTLTも急上昇、特にEDVは爆上がり
この時期、株式市場は暴落しましたが、
米国債が「逃避先」として買われ、長期金利が急落。
金利に超敏感なEDVは一時的に**+60%超の上昇**を見せ、
金利低下局面での“爆発力”を証明しました。
🦠 ② コロナショック(2020年)
- 金利:急低下 → 急上昇
- 結果:EDVは短期で急騰後に急落、TLTは比較的安定
2020年初頭、パンデミック懸念で金利が急落し、EDVは**わずか数週間で+40%**上昇。
しかしその後の金融緩和や景気回復で金利が上がり、下げ幅も大きかったのが特徴です。
TLTは利回りがあるため下げ方がやや緩やかでした。
💥 ③ インフレ・金利上昇局面(2021〜2023年)
- 金利:歴史的な上昇(FRBによる利上げ)
- 結果:EDVは−50%超の下落、TLTも大幅安
米国10年債利回りが1%台から4%台へ。
EDVはデュレーションが長いため、金利上昇ショックで株並みに急落しました。
TLTもマイナスでしたが、EDVほどの下げではありません。
ここで「金利に敏感=リターンもリスクも大きい」というEDVの性格がはっきりしました。
🌱 ④ 現在(2025年時点)
- 金利:ピークからやや低下傾向
- 結果:EDV・TLTともに反発中(リバウンド局面)
インフレ鈍化と利下げ期待が進み、EDV・TLTともに底打ち反発。
特にEDVは金利低下を先取りしてTLTを上回る上昇を見せています。
金利トレンド転換期では、EDVのリターンポテンシャルが再注目されています。
💰 配当(分配金)と利回り
「同じ債券ETFでも、配当の出方や“利回りの意味”が全然違う」。
ここを理解しておくと、自分に合った運用スタイルが見えてきます。
🔸 EDVの利回り
EDVは年4回(四半期ごと)に分配金がありますが、実際の金額はかなり控えめです。
なぜなら、EDVが投資しているのは**ゼロクーポン債(利息がない債券)**だから。
その代わり、**債券そのものの利回り(30日SEC利回り)は約4.55%(2025年10月時点)**と高水準です。
つまり、「いま買った債券を満期まで保有した場合に得られる想定リターン」が4.5%前後ということ。
💬 EDVは、配当でコツコツというよりも、
金利が下がった時の値上がり益(キャピタルゲイン)を狙うタイプ。
“配当をもらうETF”ではなく、“値動きでリターンを取るETF”です。
🔸 TLTの利回り
TLTは毎月分配型で、実際に配当を受け取れるETFです。
組み入れられているのは通常の利付国債なので、金利上昇局面では分配金も上がりやすく、
現在の30日SEC利回りは約4.7%前後(2025年10月時点)。
💬 こちらはEDVと違い、
「毎月安定的に利息を受け取りながら保有したい人」に向いています。
値動きよりもインカムの安心感を重視するタイプのETFです。
☕ ポイント(ETFの違い)
| ETF | 分配頻度 | 30日SEC利回り(2025年10月) | 実際の分配傾向 | リターンの主軸 |
|---|---|---|---|---|
| EDV | 四半期(年4回) | 約4.55% | 分配はごく少なめ | 値上がり益(キャピタルゲイン) |
| TLT | 毎月 | 約4.67% | 毎月安定的に支給 | 分配金(インカムゲイン) |
どちらも“年利4%台”という数字は同じでも、
EDVは「将来の利回り」型、TLTは「いま受け取る利回り」型。
「値動きで攻めるか」「配当で守るか」――その違いが、この2つのETFの本質です。
🧩 ポートフォリオの比較
同じ「米国長期国債ETF」でも、中身の債券構成には明確な違いがあります。
どちらも“米国政府が保証する安全資産”ではありますが、
「どの期間の債券をどの比率で持つか」が、値動きや分配金の違いを生んでいます。
🔸 ETFを構成する債券の比率
- EDVは、残存期間20〜30年の超長期ゾーンに集中。
→ 超長期債(ゼロクーポン債)に特化しており、金利変動に非常に敏感です。 - TLTは、20年以上の幅広い年限の米国債をカバー。
→ デュレーション(価格変動率)は短く、EDVより値動きが穏やかです。
💬 一言でいうと、EDVは「一点集中型」、TLTは「分散型」のポートフォリオ。
同じ“長期債”でも性格がかなり違います。
🔸 組み入れ債券の格付け比率
どちらも米国政府保証のAAA格付け債券が中心です。
つまり「債券そのものの信用リスク」はほぼゼロ。
違いは、金利に対する感応度と分配設計だけです。
💬 信用リスクは限りなく低いけれど、
「価格変動リスク(ボラティリティ)」はEDVのほうがずっと高い、という点がポイント。
🏦 EDV vs TLT 比較表(2025年時点)
| 項目 | EDV | TLT |
|---|---|---|
| 正式名称 | Vanguard Extended Duration Treasury ETF | iShares 20+ Year Treasury Bond ETF |
| 運用会社 | バンガード(Vanguard) | ブラックロック(iShares) |
| ベンチマーク | Bloomberg U.S. Treasury STRIPS 20–30 Year Equal Par Bond Index | ICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Index |
| 投資対象 | 米国超長期国債の ストリップス債(ゼロクーポン債) | 残存期間20年以上の 通常の米国長期国債(クーポン付き) |
| 平均残存期間(デュレーション) | 約25〜27年(非常に長い) | 約16〜17年(長期) |
| 金利変動への感応度 | 非常に高い(金利1%変動で価格約20%変動) | 高い(金利1%変動で価格約17%変動) |
| 分配金 | 四半期ごと(ごく少額) | 毎月分配(実質年4〜5%) |
| 分配利回り(目安) | 約4.55%(30日SEC利回り・2025年10月時点) | 約4.67%(30日SEC利回り・2025年10月時点) |
| 信託報酬(経費率) | 0.05% | 0.15% |
| 主な特徴 | 超長期ゼロクーポン債に集中。金利低下局面で爆発的な値上がりが期待できるが、上昇局面では急落リスクも大。 | 通常の長期国債ETF。分配金を得ながら安定的に長期金利の動きを取れる。 |
| 向いている投資家 | 金利低下(景気悪化)時の値上がり狙い・リスク許容度が高い投資家 | 分配金を得ながら安定運用したい投資家 |
| ティッカー | EDV | TLT |
💡投資ポイントと注意点
- EDV:レバレッジのない“金利トレード特化型ETF”
→ 金利が下がる局面では株以上に上がる。逆に金利上昇局面では暴落リスクも大きい。 - TLT:分配金をもらえる“バランス型長期国債ETF”
→ 債券の安定感を活かしながら、毎月の分配金収入も得られる。
🪶 カモネギインベスター的ひとこと


どちらも「米国長期国債」に投資するETFだけど、
EDVは“振り切った値動き”、TLTは“バランス重視”。
同じ方向に動くのに、揺れ幅が違うんです。
金利サイクルを読んで、使い分けるのがこの2つの賢い付き合い方ですね。
✅ まとめ:金利サイクルを味方につけろ
EDVとTLT、どちらも“米国長期国債ETF”という同じ枠に見えますが、
実際は「攻め」と「守り」でまったく性格が違います。
| 目的 | 向いているETF | 一言でいうと |
|---|---|---|
| 金利が下がるときに一気にリターンを狙いたい | EDV | 「攻めの債券」 |
| 安定した分配金を受け取りながら長期保有したい | TLT | 「守りの債券」 |
💡 投資戦略としての使い分け
- 株式との逆相関を活かしたいなら → EDV
→ 景気後退や利下げ局面で一気に上がる、いわば“金利トレード銘柄”。 - 毎月のインカムと安定感を重視するなら → TLT
→ 債券本来の役割である“守り”を担う存在。
🪶 カモネギインベスター的ひとこと
金利の世界は、上がれば痛いし、下がれば嬉しい。
その波をどう活かすかで、債券ETFの価値はまったく変わります。
EDVは波に乗るサーフボード、TLTは波を受け止める浮き輪。
金利という大海で生き残るなら──どちらも、持っておいて損はありません。


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